2018年地震で北海道全域で電気が消えた全域停電ブラックアウト。
地震国、日本ではいつ起きるか分からない地震。
地震により突然ブラックアウトしたら貴方はどうしますか?
夜電気が付かない、いつ点くか不安、余震が襲いかかる中パニックにならないためにもエピソードをお伝えします。
突然襲ってくる自然災害に向けて日頃の防災意識を高めていきましょう。
ブラックアウトと星空と暖かさシリーズその6です。エピソード2です。
お節介おばさんのほんわかエピソード編
真夜中に起きた停電は、3日間続き、灯りもなく冷蔵庫は止まり、テレビは映らずインターネットは切れてしまいました。
大混乱の中、人々はどのように暮らしていたのでしょう。
突然のブラックアウトに見舞われながら、たくましく暮していた方の実話を匿名で書き残してみます。
勤務先のお客さんで、地域では有名な大節(おおせつ)【仮名】さんという70代の女性がいます。
お騒がせなお節介おばさん
大節さんがなぜ地域で有名かというと、いわゆる「お節介おばさん」だからです。
お節介といっても、悪意があるわけでも誰かを傷つけるわけでもないため、地域では「お騒がせな有名人」として親しまれています。
遅くまで遊んでいる子どもに自宅でお菓子を振る舞う予定が、誘拐事件に間違われてしまったり。
朝早くから地域のお祭りの幟を立てていたら、実は1日早く立ててしまいお客さんが集まってしまったりと、いわゆる面白エピソードばかりです。
ただ、失敗談ばかりではないところが大節さんが好かれるところで、最近足の調子が悪くなった高齢男性を整骨院に連れて行ってくれたこともありました。
実は、男性が「ちょっとした筋肉痛」と思っていた痛みは、専門家がひと目で骨折とわかるほどで、悪化してしまう前に専門の病院へお連れすることができたこともあります。
お節介おばさんならではの視点
ブラックアウトから復旧して数日後、今までのスケジュール通りに整骨院を訪れた大節さんは停電の中何があったかを1時間かけて話してくれました。
「家は8階建てだから、5階より上は水がいかないわけよ」
高層階へは、電気で動くモーターで地下の水道管から水を送っており、大節さんはすぐに上の階の人が水に困ることを予想していたらしいのです。
「私ね、もうすぐ起きて花壇用の水道の元栓を開けたの。段ボールに給水所って書いてね」
花壇用の水道は住民の共有設備ですが、停電の中でとっさに思いつくことは日頃から地域を観察しているからなのでしょう。
「あとはポリタンクね、ゴミ置き場にポリタンクがずっと捨ててあるから、トイレ用ってマジックで書いて並べておいたのよ」
冬の寒さの厳しいこの地域では、ポリタンクで灯油を購入する人も少なくはなく、引っ越しなどで不要になり、そのまま捨てられることも多いのです。
夏場にポリタンクの場所まで覚えているのは、お節介おばさんならではの鋭い視点です。
高層階に住んでいて、ポリタンクを使わない方はとても助かったことでしょう。
親切な英語の案内板は?
「最近、外国人の人が多いじゃない。あの人たち、どうしてるかなって気になってたの。スマホの電池もないじゃない」
ブラックアウト当日、午前中にポリタンク集めを終えた大節さんは地域に滞在している外国人のためにひと肌脱ぐことを決意します。
「ラジオでスマホの充電がなくなるって言うじゃないの。私はあまり使わないから困らないけど、若い人は困るわね。会長に言って防災倉庫の発電機を動かしてもらったわけ」
スマホの充電は、古い機種なら1日使い続けたら切れてしまいます。
そういえば、町内会の会館で充電スポットがあったのは大節さんのアイデアでした。
「看板も書いたのよ、“スマホ充電できます”ってね。けど外国人は読めないじゃない、もう1つ書いて貼り付けたわけ」
確か充電スポットを知らせる案内が電信柱や塀に貼られていたのですが……書かれていた英語は“Consent is 20 meters(この先20メートルで合意です)”でTwitterでも話題になっていました。
英語が読める人には“Power supply is 20 meters”の間違いと気づき、外国人には謎の怪文書に見えてしまうおもしろ看板でした。
「外国人の人って看板読まないのね。私ウロウロしてる外国人に声かけて、会館に連れて行ったの。そしたらセンキューって大喜びよ。英会話って本当に役に立ったものよ。あなたも習っておいた方がいいわね」
英会話が役に立ったかはさて置き、自分の暮らしよりも、困っている人目線のアイデアは大節さんが本当に良い人だったことを表す何よりの証拠でした。
ブラックアウトのまとめ
突然の大規模停電は、何をしていいのかわからない混乱とどうなるのかわからない不安でいっぱいになる方が少なくはないはずです。
お騒がせなお節介おばさんが取った行動は、「まず困っている人のため」というシンプルなものでした。
普段から人のために何ができるかを優先して考えている、お節介おばさんならではの優しい視点が生んだ行動に助けられた方は少なくないはずですよね。