白神山地は日本最高峰級の自然遺産・神秘が息づく森林と湿原の世界遺産

記事内に広告が含まれています。

日本の世界遺産の中でも、自然遺産では国内初の白神山地は、世界一の規模のブナの原生林が高い評価を受けて登録されました。
古代から変わらぬ自然と文化の息吹が今も感じられる日本随一の豊かな自然遺産、それが白神山地です。
湿原、森林、滝、火山岩など多様な自然が織りなす風景は、まるで別世界のように神秘的で美しいものばかりです。

今回は、白神山地を代表する動植物、世界遺産の登録に影響した出来事をまとめさせていただきます。

前回の記事は 信仰に関係した文化遺産・神宿る島沖ノ島と関連遺産群と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産でした。
こちらもご覧いただくとよく理解できると思います。

白神山地は日本随一の豊かな自然遺産

 

英語表記)Shirakami-Sanchi
登録区分)自然遺産
登録年)1993年
登録基準)(9)
国内の登録順位)No.4
面積)169.71km2(16.971ha)

 

自然遺産の中でも、映画の世界に登場しそうなほど幻想的な風景が広がる白神山地。

東北北部の白神山地は、登録されている地域の約74%は青森県残りの南側が秋田県にまたがっています。

日本初の自然遺産に登録された1993年、貴重な動植物の生態系は「9.陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において重要な生物学的プロセスを示す顕著な見本であるも」として屋久島とともに高い評価を受けています。

白神山地

 

自然遺産の白神山地の希少な植物と動物

総面積2400,000km2(240000ha)とされる白神山地で、自然遺産に登録されているのは169.71km2(16.971ha)とブナの森の一帯に限られています。

なぜ、ブナ林が特に重要視されているのでしょうか?

 

白神山地を代表する植物ブナ

白神山地を代表するブナ(英:Japanese Beech)は、樹高30mにもなるブナ科ブナ属の樹木です。

雪が多く湿度の高い環境に極めて強く、日本海側の気候に適応した温帯性落葉広葉樹に分類されます。

ブナの分布は、北限は北海道の道南渡島半島、本州・四国・九州まで温帯気候の地域に広く分布しています。

中でも、東北地方の青森県から秋田県にまたがる白神山地には、世界最大のブナの原生林が広がっています。

秋に実るドングリに似た果実は、冬に気温が下がる環境に合わせて保存されやすく、森林に暮らす動物の大切な餌でもあります。

一方で、ブナの木材は重く腐りやすく曲がりやすいため、本格的に利用されるのは1980年以降になってからです。

それまでは薪や農業用の資材として大量に伐採され、太平洋戦争を境に木材として利用しやすいスギが大量に植えられることになります。

 

白神山地の希少な動物

また、白神山地には4000種の動物が生息していることが確認されています。

特に、キツツキの仲間のクマゲラ(英:Black woodpecker)はブナの木の中にいる幼虫を餌にしたり、木に空けた穴を巣穴にするなどブナとは切っても切れない関係の動物です。

また、国内希少野生動植物種に指定されているイヌワシとクマタカも世界的に希少とされる動物です。

 

自然遺産に選ばれる理由

自然遺産(英:natural heritage)は、生き物を含めた自然の風景、生き物を含めない地域で、保存的・学術的・普遍的な価値があるものと定められています。

風景の美しさや広さよりも、生き物や自然現象の希少さと、申請国の保護の状況が重視されています。

保護の状況は、Ia(厳正保護地域)、Ib(原生自然地域)、II(国立公園)、III(天然記念物)、IV(種と生息地管理地域)、V(景観保護地域)、VI(資源保護地域)と、どれにも分類できない8種類が登録対象になっており、白神山地は、Ib(原生自然地域)に分類されています。

専門家や地域をあげて始まった1980年代からの保護活動によって、1992年に自然環境保全法に基づく自然環境保全地域に指定されます。

翌年の1993年に世界遺産に登録が決まった理由には、こうした保護活動が大きく影響しているのは明らかです。

 

白神山地とSDGs

自然豊かな白神山地は、ブナの木やクマゲラなど自然の営みだけではなく、人の営みも続く地域です。

立ち入りが許可されている山々は、登山家に人気のスポットでもあり、狩猟生活で生計を立てているマタギの方が暮らしている地域でもあります。

一部の心ない登山者による自然破壊が問題視される一方で、自然保護のため狩猟地域の立ち入り制限はマタギの方々の暮らしに大きな影響を与え、現在でも議論が進んでいません。

近年ブームのSDGsには、社会が「持続可能」な目標を持つという目線で環境問題を捉えています。

自然保護か人の暮らしかの白黒だけの視点ではなく、私たちがどの程度続けることができるかの目線も必要になる問題です。

 

世界遺産検定公式過去問集(4級)からの例題

Q1.白神山地で見られる原生林は、主に何の樹木からなるでしょうか

  1. サクラ
  2. ヒノキ
  3. ナラ
  4. ブナ
答え:(4) ブナ

 

 

引用元:2018年3月,p72,世界遺産検定4級

 

Q2.白神山地に生息する絶滅危惧種の生物は何でしょうか

  1. ユキヒョウ
  2. クマゲラ
  3. ヒグマ
  4. ジャイアントパンダ
答え:(2) クマゲラ

 

 

引用元:2018年7月,p81,世界遺産検定4級

 

Q3.白神山地の特徴は何でしょうか

  1. 3000m級の山々が連なっている
  2. 活発に火山が噴火している
  3. ブナの原生林が広がっている
  4. 恐竜の化石が多数発掘されている
答え:(3) ブナの原生林が広がっている

 

引用元:2018年12月,p102,世界遺産検定4級

まとめ

「白神山地」の自然にまつわるお話はいかがでしたか?
世界遺産検定過去問は、正解できたかと思います。
自然遺産は、風景の美しさや生き物の希少さだけではなく、保護の状況も重要視されています。
世界遺産に選ばれるためだけを目指すなら、とにかく立ち入り禁止区域の保護地域にしてしまえばいいという考えもあります。
ですが、自然の地域は古くから人の手が入っていたり、暮らしの一部になっている地域もあります。

これからの自然保護は、人の暮らしとどの程度具体的に続けられるのかのSDGsの視点も必要になるのは間違いのないことでしょう。

次回の記事は 世界遺産古都京都は日本の心宿る文化財の宝庫神々しい美と古き良き日本です!お楽しみに!